透析膜シリーズ③ ダイアライザ・ヘモダイアフィルタ分類と適応のすべて

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透析膜(ダイアライザ・ヘモダイアフィルタ)の分類は、透析の治療効果や患者さんのQOL(生活の質)に直結します。

本記事では、「新区分」と「旧区分」の違いを整理し、溶質除去特性やアルブミン漏出量をふまえた適切な膜の選び方を解説します。

この記事から得られること
  • 透析膜の新区分・旧区分の違いを理解し、臨床に生かせる。
  • ダイアライザとヘモダイアフィルタの分類と特性がわかる。
  • 患者状態に合わせた膜の選び方を図表とともに解説します。

目次

ダイアライザの分類と新区分・旧区分の違い

新区分

ダイアライザ新区分の分類表(β2-MGクリアランスとAlbふるい係数による4分類)

・β2-MGのクリアランス
  70mL/min未満→「Ⅰ型」   70mL/min以上→「Ⅱ型」

・Albのふるい係数
  0.03未満→「a型」      0.03以上→「b型」

・上記を組み合わせて、「Ⅰa型」「Ⅱa型」「Ⅰb型」「Ⅱb型」に細分化されています。1)
・特別な機能をもつものは「S型」(現在ではEVAL膜は販売されていないため、PMMA膜のみ)
・「特定積層型」は診療報酬上の区分で、「血液浄化器(中空糸型)の機能分類 2013」には非掲載。

旧区分

ダイアライザ旧区分の分類表(β2-MGクリアランスによる5分類)

β2-MGのクリアランスのみで、5段階に分類

  • Ⅰ型 10mL/min未満
  • Ⅱ型 10mL/min以上 30mL/min未満
  • Ⅲ型 30mL/min以上 50mL/min未満
  • Ⅳ型 50mL/min以上 70mL/min未満
  • Ⅴ型 70mL/min以上

注意点

この分類は以下の条件での測定値をもとにしています。

  • 膜面積1.5㎡
  • 血流量200mL/min
  • 透析液流量500mL/min
  • 濾液流量15mL/min

条件が異なれば性能も変化します。

Ⅱa型(血流量200mL/min・膜面積1.5㎡)よりも、Ⅰa型(血流量300mL/min・膜面積2.1㎡)の方が除去性能が高い場合もあります。

【ポイント】
分類だけで膜を選ばず、血流量・膜面積・患者状態を合わせて判断しましょう。

ダイアライザの使い分け

※小分子:BUNなど 中分子;β2-MGなど 大分子:α1-MGなど

Ⅰa型

小分子:よく除去される
中分子:あまり除去されない ~ 除去される
大分子:ほぼ除去されない

中分子の溶質は積極的に除去せず、Albは抜きたくない場合に使用します。

Ⅱa型

小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:あまり除去されない ~ 除去される

中分子の溶質は積極的には除去し、Albは抜きたくない場合に使用します。

Ⅰb型

小分子:よく除去される
中分子:除去される
大分子:よく除去される

中分子の溶質は積極的には除去せず、Albは抜いても問題ない場合に使用します。

Ⅱb型

小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:よく除去される

中分子の溶質は積極的には除去し、Albは抜いても問題ない場合に使用します。

S型

小分子:よく除去される
中分子:あまり除去されない ~ 除去される
大分子:あまり除去されない ~ 除去される

中分子の溶質は積極的には除去せず、Albは抜きたくない場合 ~ Albは抜いても問題ない場合に使用します。
大分子溶質の吸着除去や掻痒感の改善等をを目的に使用します。

特定積層型

小分子:除去される
中分子:あまり除去されない
大分子:あまり除去されない

末梢循環血流の改善等を目的に使用します。

【ポイント】
Albをできるだけ保持したい場合 → 「a型」の膜を選択。
掻痒感改善や大分子除去を狙う場合 → 「b型」やS型の膜を活用。

ダイアライザ 一覧

市販ダイアライザの新区分別一覧表

【各社ラインナップを知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】

ヘモダイアフィルタの分類とアルブミン漏出量の違い

今まで、ヘモダイアフィルタの分類は単一で、詳細な細分化は行われていませんでした。

血液透析濾過器の性能評価と使い分け」により、統一した性能評価法が策定されましたが、策定されて間もないためメーカーのカタログ等には、明記されていません。

ここでは、筆者独自の分類を紹介します。

ヘモダイアフィルタのAlb漏出量による3分類(低漏出型・中漏出型・高漏出型)

Alb漏出量

  • Alb低漏出型:1g未満
  • Alb中漏出型:1g以上~4g未満
  • Alb高漏出型;4g以上

注意点

ヘモダイアフィルタの分類

  • 膜面積:2.1㎡
  • 前希釈
  • 濾過流量12L/h(PMF-Aについては、濾過流量9L/h)

上記の条件で使用した際のおおよそのAlb漏出量で分類しています。

透析条件が異なると透析膜の性能にも違いが生じるため、分類のみにとらわれず膜面積濾過流量などを考慮した膜選択が重要になります。

【ポイント】
Alb漏出量は透析条件で変動します。カタログ値だけでなく実測条件を考慮しましょう。

NVF(トレライトHDF)の場合

NVF(トレライトHDF)の濾過流量とアルブミン漏出量の関係グラフ
引用:

ヘモダイアフィルタの使い分け

※小分子:BUNなど 中分子;β2-MGなど 大分子:α1-MGなど

【ポイント】
Albの濃度や症状改善の目的に合わせて、Alb低・中・高漏出型を使い分けましょう。

Alb低漏出型

小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:あまり除去されない

低Albであり、Albの漏出が許容できない場合に使用。
透析困難症。

Alb中漏出型

小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:除去される

低Albではなく、Albの漏出が許容できる場合に使用。スタンダード。
掻痒感や骨関節痛等の改善。

Alb高漏出型

小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:よく除去される

Albは十分にあり、Albの漏出が多くても許容できる場合に使用。
RLS等の改善。

【ポイント】

  • Alb低漏出型:低Albの患者向け
  • Alb中漏出型:スタンダード。症状改善と安全性のバランス
  • Alb高漏出型:Albの漏出が許容でき、症状改善を優先するケースに適応。

ヘモダイアフィルタ 一覧

市販ヘモダイアフィルタのAlb漏出量別一覧表

【透析膜の分類について知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】

おわりに

透析膜(ダイアライザ・ヘモダイアフィルタ)の分類と特性を理解すれば、患者ごとに最適な膜選択が可能になります。
新区分・旧区分の違いやAlb漏出量を踏まえて、治療効果の最大化を目指しましょう。

患者状態に応じた適切な膜選びが、治療成績やQOL向上につながります。


【関連記事はこちら】

【参考文献】
1)川西秀樹 他:血液浄化器(中空糸型)の機能分類 2013.透析会誌46(5):501~506
2)友雅司 他:学術委員会 血液浄化療法の機能・効率に関する小委員会報告 血液透析濾過器の性能評価と使い分け.透析会誌 56(3):83~84,2023

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