透析膜シリーズ② 中空糸構造とポアサイズから読み解く性能差ガイド

透析膜シリーズ② 中空糸構造とポアサイズの性能差ガイドアイキャッチ画像

透析膜の構造理解は最適な選定の第一歩です。

各部品の役割とポアサイズの違いを図解し、ダイアライザとヘモダイアフィルタの分類・特徴、選定時の着眼点まで一読で掴めます。


この記事から得られること
  • 透析膜の構造と部品の役割が基礎からしっかり理解できる
  • ポアサイズ別の膜性能差を図で直感的にすぐ把握できる
  • ダイアライザとヘモダイアフィルタの選定基準が身につく
目次

透析膜の構造

Dialysis-membrane-Structure

透析膜は、「ヘッダー」「ハウジング(本体ケース)」「中空糸」「中空糸支持体(接着剤・ポッティング)」など、いくつかの部品から成り立っています。

中空糸

hollow-fiber

透析膜(中空糸型)のハウジング内には、約1万本ものストロー状の中空糸が収納されています。
この中空糸の側面には、無数の微細なポア(孔)があり、そこから不要な物質をろ過する仕組みです。

透析膜を選ぶ際、このポアサイズは非常に重要な要素となります。
ポアのサイズや数を調整することで、除去したい物質やその量をコントロールすることが可能です。

【ポイント】
ポアサイズと数の違いが、除去される物質の種類と量を決めます。
膜性能の把握には、視覚イメージと組み合わせて理解するのが効果的です。

添加物

透析膜に添加される物質には、それぞれ目的とリスクがあります。
生体適合性を高めたり製造上のメリットがある一方で、アレルギーや長期的な安全性に懸念が報告されているものもあります。
「添加物=悪」ではありませんが、避けられるなら避けたいのも事実です。
また、添付文書に記載がないからといって、必ずしも添加物が含まれていないとは限らない点にも注意が必要です。

PVP(ポリビニルピロリドン)
 膜表面を親水化して初回から水・血液をなじみやすくし、タンパク付着や補体活性化を抑制。
 まれに重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー様反応)が報告されています(4)

BPA(ビスフェノールA)
 透明性・機械的強度・成形性に優れ、(主にポリカーボネート製ハウジング等で)視認性・寸法精度・耐久性を確保しやすい。
 溶出が報告されており、内分泌攪乱作用が懸念されています(5)

BPS(ビスフェノールS)
 「BPAフリー」のニーズに応えつつ、BPAに近い強度・耐滅菌性・加工性を維持するための代替として用いられる。 
 BPA同様に内分泌撹乱作用の可能性が指摘されており、BPAフリー透析膜にはBPSが使用されていることがあります(6)

滅菌方法

透析膜は製造後に滅菌処理が施されますが、この方法の違いも生体適合性や副作用に影響を与えることがあります。

  • γ線滅菌
  • 高気圧蒸気滅菌(オートクレーブ)

滅菌方法と副作用の関連については「突然発症した透析困難症を高圧蒸気滅菌PS膜の使用で改善できた1症例」(透析会誌52巻10号, 2019)に症例報告があります。


中空糸支持体

Dialysis-membrane-Hollow-line-support-body

中空糸の両端は、中空糸支持体によって固定されています。

これにより、透析膜に流入した血液が透析液と混ざることなく、中空糸の内部だけを通って流れるようになっています。

ポアサイズからみる膜の分類

ポアサイズを意識することで、患者の状態や治療目的に応じた透析膜の選定がしやすくなります。

ここでは、私が透析膜を選ぶ際に参考にしている中空糸のイメージ図を、分類ごとに紹介します。

※これはあくまで筆者の主観によるイメージであり、実際の製品とは異なる場合があります。

【透析膜の分類について知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】

ダイアライザ

ダイアライザは拡散を主とするため、膜に大きなポアがあっても、大分子の除去には限界があります。

Ⅰa型(旧Ⅰ型)

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、少しだけある。
大分子が抜けるポアは、ほぼ存在しない。

Ⅰa型(旧Ⅳ型)

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、少しある。

Ⅱa型

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。

Ⅰb型(旧Ⅳ型)

※Ⅰb型は、FB-Fαecoしかないため、旧Ⅳ型を想定

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。

Ⅱb型

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、かなり多くある。

ヘモダイアフィルタ

ヘモダイアフィルタは、拡散と濾過を併用するため、大きなポアサイズがあると大分子の除去も可能になります。

Alb低漏出型

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、少しある。

Alb中漏出型

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。

Alb高漏出型

小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、かなり多くある。

おわりに

ダイアライザとヘモダイアフィルタは、基本的には同じ構造をしていますが、治療方法や目的に応じて使い分ける必要があります。

また、膜面積の違いや製品ごとのラインナップにより、ポアの数やサイズにも違いが生じ、膜性能にも影響します。

そのため、自施設で採用している各透析膜の性能をしっかりと把握し、患者にとって最適な選択ができるようにしましょう。

【ポイント】
自施設で採用している製品の特徴を一覧で把握しておくと選定がスムーズです。
一覧表にまとめておくのもおすすめです。


【参考文献】

1)旭中空糸型ダイアライザーAPS-EA 添付文書
2)トリアセテートホローファイバーダイアライザー 添付文書
3)ニプロ 「一般の皆さまへ 腎不全患者の“いのちのツール”」
4)Boer WH, Liem YS, de Beus E, Abrahams AC. Acute reactions to polysulfone/polyethersulfone dialysers: literature review and management. Netherlands Journal of Medicine. 2017;75(1):4–13.
5)Haq Z, Wang X, Cheng Q, Dias GF, Moore C, Piecha D, Kotanko P, Ho C-H, Grobe N. Bisphenol A and Bisphenol S in Hemodialyzers. Toxins. 2023;15(7):465.
6)Cambien G, Dupuis A, Guihenneuc J, et al. Endocrine disruptors in dialysis therapies: A literature review. Environment International. 2023;178:108100.
7)重松武史,牧尾健司,中村拓生,佐野博之,上村健登,西庵良彦,宮本孝.突然発症した透析困難症を高圧蒸気滅菌PS膜の使用で改善できた1症例.透析会誌.2019;52(10):593–598.


【各社ラインナップを知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】

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