透析膜がどのように分類されているのかを知ることは、適切な治療を選択するための第一歩です。
この記事では、各分類の透析膜がどのように分類され、どのような状況で使用されるかについて詳しく解説します。
ダイアライザの分類
新区分
・β2-MGのクリアランスが、
70mL/min未満の場合「Ⅰ型」、
70mL/min以上の場合「Ⅱ型」
・Albのふるい係数が、
0.03未満を「a型」、0.03以上を「b型」
上記を組み合わせて、「Ⅰa型」「Ⅱa型」「Ⅰb型」「Ⅱb型」に細分化されています。1)
・特別な機能をもつものは「S型」
※現在ではEVAL膜は販売されていないため、PMMA膜のみです。
・「特定積層型」は、「血液浄化器(中空糸型)の機能分類 2013」には含まれておらず、診療報酬上の区分です。
旧区分
・β2-MGのクリアランスのみによって、5つに分類されています。
Ⅰ型 10mL/min未満
Ⅱ型 10mL/min以上 30mL/min未満
Ⅲ型 30mL/min以上 50mL/min未満
Ⅳ型 50mL/min以上 70mL/min未満
Ⅴ型 70mL/min以上
注意点
上記の分類は、膜面積1.5㎡・血流量200mL/min・透析液流量500mL/min・濾液流量15mL/minの条件で分類されたものです。
透析条件が異なると透析膜の性能にも違いが生じるため、分類のみにとらわれず血流量や膜面積などを考慮した膜選択が重要になります。
例:Ⅱa型・血流量200mL/min・膜面積1.5㎡より、Ⅰa型・血流量300mL/min・膜面積2.1㎡のほうが除去性能が高くなることがあります。
ダイアライザの使い分け
※小分子:BUNなど
中分子;β2-MGなど
大分子:α1-MGなど
Ⅰa型
小分子:よく除去される
中分子:あまり除去されない
~ 除去される
大分子:ほぼ除去されない
中分子の溶質は積極的に除去せず、Albは抜きたくない場合に使用します。
Ⅱa型
小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:あまり除去されない
~ 除去される
中分子の溶質は積極的には除去し、Albは抜きたくない場合に使用します。
Ⅰb型
小分子:よく除去される
中分子:除去される
大分子:よく除去される
中分子の溶質は積極的には除去せず、Albは抜いても問題ない場合に使用します。
Ⅱb型
小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:よく除去される
中分子の溶質は積極的には除去し、Albは抜いても問題ない場合に使用します。
S型
小分子:よく除去される
中分子:あまり除去されない
~ 除去される
大分子:あまり除去されない
~ 除去される
中分子の溶質は積極的には除去せず、Albは抜きたくない場合 ~ Albは抜いても問題ない場合に使用します。
大分子溶質の吸着除去や掻痒感の改善等をを目的に使用します。
特定積層型
小分子:除去される
中分子:あまり除去されない
大分子:あまり除去されない
末梢循環血流の改善等を目的に使用します。
ダイアライザ 一覧
ヘモダイアフィルタの分類
今まで、ヘモダイアフィルタの分類は単一で、詳細な細分化は行われていませんでした。
「血液透析濾過器の性能評価と使い分け」により、統一した性能評価法が策定されましたが、策定されて間もないためメーカーのカタログ等には、明記されていません。
今後、ヘモダイアフィルターの比較がしやすくなることが期待されます。
ここでは、私が個人的に作成し使用している分類方法をご紹介します。
・Alb漏出量の違いによって、3つに分類しています。
Alb低漏出型:1g未満
Alb中漏出型:1g以上~4g未満
Alb高漏出型;4g以上
注意点
ヘモダイアフィルタの分類については、膜面積2.1㎡・前希釈・濾過流量12L/h(PMF-Aについては、濾過流量9L/h)の条件で使用した際のおおよそのAlb漏出量で分類しています。
透析条件が異なると透析膜の性能にも違いが生じるため、分類のみにとらわれず膜面積や濾過流量などを考慮した膜選択が重要になります。
例:膜面積や濾過流量を変更すると、Alb漏出量が変化することがあります。
NVF(トレライトHDF)の場合
引用:東レ
ヘモダイアフィルタの使い分け
※小分子:BUNなど
中分子;β2-MGなど
大分子:α1-MGなど
Alb低漏出型
小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:あまり除去されない
低Albであり、Albの漏出が許容できない場合に使用。
透析困難症。
Alb中漏出型
小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:除去される
低Albではなく、Albの漏出が許容できる場合に使用。スタンダード。
掻痒感や骨関節痛等の改善。
Alb高漏出型
小分子:よく除去される
中分子:よく除去される
大分子:よく除去される
Albは十分にあり、Albの漏出が多くても許容できる場合に使用。
RLS等の改善。
ヘモダイアフィルタ 一覧
おわりに
各社から様々な透析膜(ダイアライザ・ヘモダイアフィルタ)が販売されており、使い分けについて悩む方もいると思いますが、分類について理解を深めることで、使い分けについて悩むことは少なくなると思います。
【参考文献】
1)川西秀樹 他:血液浄化器(中空糸型)の機能分類 2013.透析会誌46(5):501~506
2)友雅司 他:学術委員会 血液浄化療法の機能・効率に関する小委員会報告 血液透析濾過器の性能評価と使い分け.透析会誌 56(3):83~84,2023
【各社ラインナップを知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】
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