透析膜の構造を知ることによって、選び方のしくみを理解することに繋がります。
この記事では、透析膜がどのような構造になっているか解説します。
透析膜の構造
透析膜は、ヘッダー、ハウジング(本体ケース)、中空糸、中空糸支持帯(接着剤・ポッティング)などの複数のパーツによって構成されています。
また、中空糸にはPVPやグリセリンなどの添加物が含まれている場合があります。
透析膜を選ぶ際には、中空糸の素材だけでなく、透析膜に使用されているパーツの原材料や添加物などについても注意が必要です。
中空糸
透析膜(中空糸型)のハウジング内には、約1万本ものストロー状の中空糸が収納されています。
これらの中空糸の側面には、ポア(側孔)が配置されており、透析膜を選択する際、ポアサイズは非常に重要な要素となります。
ポアサイズやポアの量を変化させることにより、除去したい物質や量を調整することが可能です。
中空糸支持体
中空糸の両端は、中空糸支持体によって固定されています。
これにより、透析膜に流入した血液が透析液と混ざることなく、各中空糸を通じて流れるようになっています。
ポアサイズからみる膜の分類
透析膜のポアサイズを意識することによって、患者に応じた透析膜を選択することができます。
ここでは、私が透析膜を選ぶ際に考えている中空糸のイメージ図を、各分類ごとに紹介します。
※あくまで個人の主観によるイメージ図であり、実際のものとは異なります。
【透析膜の分類について知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】
ダイアライザ
拡散がメインとなるため、膜に大きなポアサイズがあったとしても、大きいサイズのものは除去されにくい。
Ⅰa型(旧Ⅰ型)
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、少しだけある。
大分子が抜けるポアは、ない。(ほぼない)
Ⅰa型(旧Ⅳ型)
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、少しある。
Ⅱa型
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。
Ⅰb型(旧Ⅳ型)
※Ⅰb型は、FB-Fαecoしかないため、旧Ⅳ型を想定
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。
Ⅱb型
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、かなり多くある。
ヘモダイアフィルタ
拡散と濾過をしているため、膜に大きいポアサイズあると、大きいサイズのものも除去されやすい。
Alb低漏出型
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、多くある。
大分子が抜けるポアは、少しある。
Alb中漏出型
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、多くある。
Alb高漏出型
小分子が抜けるポアは、かなり多くある。
中分子が抜けるポアは、かなり多くある。
大分子が抜けるポアは、かなり多くある。
おわりに
ダイアライザとヘモダイアフィルタは、基本的には同じ構造をしていますが、治療方法や治療目的によって使い分ける必要があります。
また、膜面積が異なることによってポアの数が変化したり、ラインナップの違いによりポアサイズが変化することによって、膜性能が変化します。
そのため、自施設で採用している各透析膜の性能を理解し、患者に最適な透析膜を選択する必要があります。
【参考文献】
3)ニプロ 「一般の皆さまへ 腎不全患者の“いのちのツール”」
【各社ラインナップを知りたい場合には、こちらの記事をご参照ください】
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